ファイアーエムブレム ヒーローズ はキャラゲーとして楽しみたい

任天堂が「スーパーマリオラン」の次にリリースしたスマホ向けゲームで、ファイアーエムブレムシリーズの様々な作品のキャラクターが共演するタイトルです。

サービス開始から2週間程度となり継続してプレイしているところですが、キャラゲーとしての楽しみは評価できるものの、シリーズのユニークなポイントである高い戦略性、計算された難易度を期待してはいけないかもしれません。

内容

ストーリー

011

とある異界で目を覚ましたプレイヤー(あなた)が英雄を召喚できる能力を手に入れたので、彼らの力を借りて戦う……というもので、要はファイアーエムブレム(以下FE)シリーズの各作品のキャラをガチャで手に入れ、ユニットとして使える、というもの。

私は正直ガチャ自体好きではないのですが、FEはかなり好きなので、そのキャラを集められるゲームなのであればとプレイしたところです。

システム

010

システムはもちろんFEの基本は押さえたもので、自分のターンには味方を適切に動かして攻撃させ、相手のターンでの敵の攻撃に対していかに味方を失わずに耐えていくか、という駆け引きは健在です。

もちろん「3すくみ」や飛行に弓が強いなどの「特効」などもあり、相性を考えて進軍しなければなりません。

009

操作性はかなり良く、スワイプだけで攻撃することができます。

今まで、ユニットを選択→移動先を指定→コマンドを選択→敵を選択、といった多くの操作手順が必要でしたが、今回はユニットをタップしたらそのまま攻撃したい敵までスワイプして離すだけで、自動で戦闘が開始。

これはアイテムやその他の行動を無くして単純化したから可能な操作であり、サクサクとしたプレイをさらに快適にしているといえます。

育成

007

育成に関してはソーシャルゲームらしく要素が多くなっており、強力な武器を入手したりスキルを覚えたりするには敵を倒すかレベルアップして得られる「SP」を消費。

006

レベルは40が最大であり、それに加えて同じレアリティの同じキャラを消費すれば「限界突破」でレベルをさらに追加できるため、長く育て続けることが可能です。(画像は通常のレベル40に加え、☆5ルキナもう1枚を使って+1ということ)

ゲームシステム上の難点

上で述べたようにFEとしてのシステムは受け継ぎながらソシャゲとして落とし込んでおり、ゲームとしては完成しているものの、その弊害が無視できないレベルであるのは事実です。

勝ち抜き戦のような戦局

011

今作はモバイル版ということで、フィールドの大きさはどのシナリオでも必ず6×8の48マスで、画面のスクロールはありません。それに合わせてユニットの移動距離も低下しており、通常2マス、騎馬系で3マス、といった具合です。

私がPVで最初にこれを見たときは、あえて画面のスクロール等を排除できる程度に収めることで、単純化された操作性をさらに活かせるのではないかと好印象を覚えるものでしたが、明らかに問題があります。

008

プレイしてみると、移動時の不自由さが非常に気になります。このマップの大きさに、さらに水場や山、森といったお約束の地形(※)を含めると、移動可能な通路が幅1マスということがよくあります。

画像のような狭い橋は今までも存在したものの、広いフィールドのうち僅かな狭い場所はアクセントとしてはたらきました。しかし広い場所はなく、さらに移動範囲も最高3マスであるため、どうしても仲間同士がつっかえながらの移動になってしまうのがギクシャクします。

さらに、幅が1マスしかないということは、従来の(というか戦いとして当然ともいえる)「面と面」での戦いではなく、向き合ったユニット同士のみでの「点と点」の勝ち抜き戦のようになってしまいます。

従来のように「相手の1体の強力なユニットに自軍の数体のユニットを向かわせて対抗、その際にはさらに後ろにいる敵ユニットの攻撃範囲も気にしながら移動位置を調節して……」などの奥深い戦略を立てる余地がなく、歯ごたえがあまり無いわけです。

※当然、地形効果(森だと回避上昇など)もありません。移動できる場所が兵種で若干異なるのみ。

命中・回避・必殺が存在しない

確率で発動するものが一切ありません。全ての攻撃・奥義に関して必ず効果が得られるわけです。キラーアクス(必殺が非常に高い)のような武器は、奥義の発動までに必要な戦闘回数が減少するというメリットで再現されており、やはり確率とは無縁です。

これもルールの単純化のため削除されたのだと思いますが、運要素を残してもらえないとスリルが激減してしまいます。

013

例えば自分のあるユニットが、相手の敵から逃げられない位置にいるままターンを終了しなければならないとします。

このとき従来のFEでは、味方が攻撃を回避してくれることを祈ることができました。または確率は低いものの、必殺(与ダメージ数倍)を発動して逆転するということもあり、この際は非常に爽快です。

しかし今作では、命中・回避・必殺は存在しません。これが何を意味するかというと、「次のターンに確実に死亡するユニットが判明してしまう」という状況が生まれてしまうということです。

もちろんガチャゲーでユニットを本当にロストするはずもなく、死亡してもその戦闘で得た経験値を失うというデメリットしかないため、物質的な問題はそれほどありません。しかし、「生き延びられるかどうか」というスリルを失い、必ず生き延びることが、あるいは死ぬことが分かってしまうようになったのはかなり残念です。

まあ、命中・回避まであるとバランス調整がさらに難しくなり、相手によっては(特に相手がランダムに決定され、3すくみの相性が分からない闘技場など)勝てる確率が非常に高く/低くなるという理不尽な状況も生まれるともいえるため、仕方なかった面もあるのかもしれませんが。

おそらくこういった要素は、簡略化のためにデメリットを承知したうえで今作限りで廃止しているのでしょうが……。その方針に応えて、ユーザーのほうも従来の「手ごわいシミュレーション」を期待してはいけないんじゃないかという気がします。

ソシャゲとしては良心的・キャラゲーとしては満足

ただし、ゲームとしてのシステム面以外は概ね良好といえます。まずキャラの育成が、必要条件があまりなく比較的やりやすいものになっています。

001

☆3以下のキャラならレアリティ上昇に必要なアイテムが比較的安価で、同じキャラを揃える必要もないため、愛着のあるキャラはどのレアリティだろうと一度手に入れさえすれば、☆4にするのは割と簡単。

レアリティを上げるにはレベル20以上である必要がありますが、レベル20までなら比較的簡単に手に入る「結晶」を消費すればいいだけなのでこれもラク。というか本筋は戦わせて強くすることなので、必ず使わなければいけないわけでもないですしね。

002

しかし☆4から☆5にするには、「英雄の翼」が大量に必要になるためかなり厳しく、集めるのに数週間は必要でしょう。1週間を1シーズンとした「闘技場」では、一般的なプレイではもらえる「英雄の翼」は2000程度ですが、画像に出ている通り☆4を☆5にするにはその10倍は必要。他にもミッションクリアで1000程度まとめて手に入ることもありますが……。

まあ、ガチャに頼らずに確定で☆5が得られる方法として厳しいのは常識的なので特に文句を言うほどでもないです。

また☆5になれば能力の基本値もかなり高いため、レベルが自分より5も高い敵でも簡単に倒して多くの経験値を得られ、割とすぐに成長します(これが通用するのはレベル30程度までですが)。

まとめれば、愛情と時間をかければ必ず強くできるということであり、特に不満は感じません。

012

キャラゲーとしても満足できる内容です。最近のキャラはもちろん本編と同じ声優によるボイス付。さらに過去作の英雄たちにも新たに声が付き、今風のイラストが描き下ろされています。

まあ、「このキャラはあの絵柄がよかった……」なんてこともありますが、それは個人に好みがある以上仕方がないことであるため、特に一般的な問題にするべきことではないかと。まだ全シリーズのキャラのうち半分程度しか出ていないように思うため、今後追加されていくことも楽しみにできます。

以上のことから、シリーズのファンで特にゲーム性を大きく評価している人にはあまり合わないかもしれない反面、キャラクター性を重視するプレイヤーには満足できる出来でしょう。

またシリーズをプレイしたことがない方も、一度これに触ってみて雰囲気を確かめるのもいいかもしれません。より深い戦略を求めるならば後で実際に購入してみるのもいいかと思います。

……という締めをせっかくしたのに(余談)

キャラクター性を重視するプレイヤーには満足、と言ったな。あれは嘘だ。

というのも、この記事を書き終えて画像を貼って公開しよう、と思った矢先ちょうど「聖魔の光石」よりエイリークとエフラムが追加されたのですが、エフラムがなかなかの改悪ぶりとの噂。ていうか実際確認したけどマジです。

003

まずこんな堂々と兄妹愛とか口にしない。言っても「深い絆で結ばれた……」程度では。まずこの時点で、シスコンなどとあらぬ疑いをかけられてしまいます。

これはまだ信条的なものに関わらないぶん比較的どうでもいいものの、最もファンを失望させたのが以下のセリフ(注:勝利後)。

004

エフラムが「勝ち目のない戦いはしない」というのは、「勝つ自信がある戦いしか仕掛けない」という意味。無鉄砲ながらも自分の度量をわきまえているキャラクターです。

一方この戦いは洗脳されている(という「Heroes」の設定)とはいえエフラム側から仕掛けてきたものじゃん……と叩かれてしまいました。ていうか、何故絵がドヤ顔なんだ!?立ち絵が1枚しかないなら、真面目な顔でいいんじゃ……。

少々チェック体制が甘いのでは。シリーズ全体に携わってきたスタッフが監修しているならこんなことにはならないはずなのですが……。

キャラクターがどのような思いで戦いに身を投じているか?ということはシリーズを通して重要な視点であり、その部分まで蔑ろになってしまうと……ファンの間では割と不安がよぎる事件でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。