buhitterとかいうサービスに無断転載とか批判するのは完全にお門違い

buhitterというサービスは、Twitter上にあるイラストを取得してまとめて表示するWebサービスのようです。これがツイートの無断転載にあたるとして、絵師などから酷いバッシングを受けているようですが……

実は無断転載には当たらないし、違法でもなんでもない可能性が高いです。訴えてもたぶん負けます。根拠は以下の通りです。

追記:8月3日夕方ごろからbuhitterに繋がらなくなっており、復旧は6日以降とのこと。この記事の最後に詳細な情報があります。

ユーザーはTwitter社に対して「コンテンツの無償利用」を認めている

Twitterの利用規約には、以下のような1文があります(2018/08/03閲覧)。

ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社があらゆる媒体または配信方法(既知のまたは今後開発される方法)を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンス(サブライセンスを許諾する権利と共に)を当社に対し無償で許諾することになります。

文章量が多くてパッと見よくわからんので、ざっくりまとめていえば、

ユーザーはツイートした内容をタダでTwitterに使われても文句は言わせねぇからな

ということになります。

いや待てよ、今回ツイートを使ってるのはTwitter社じゃなくて他のサイトなんだから、この規約は関係ないだろ!いい加減にしろ!

……などという声が聞こえてきそうですが、そういうことにはなりません。これに関しては次の事実を知ることで解決できます。

Twitter社は一般にツイートを引用できる方法(API)を提供している

Twitterに限らず、世のWebサービスには「API」というものが提供されている場合が多いです。APIというのは、なんかのソフトウェアが、外部のソフトウェアと情報をやり取りするための仕組みです。

例えば車の運転をするときに、内部の構造を知らなくても、ハンドルを回せば曲がるとか、ブレーキを踏めば止まるとか、目で見えるところの機能だけわかってれば、操作はできますよね。

同じように、Twitterというサービス全体の仕組みを知らなくても(というかセキュリティ的に、外部の人間に知られてはなりません)、「外部の人間向けの操作方法」だけ公開しておけば、外部の人間はユーザーのプロフィールを取ってきたり、ツイートした内容とかを読み込んで、自分でWebサービスを作るために使えますよね。

例えば……Twitterの長いプロフィールを書くことができる「ツイフィール」というサービスがあります。このサービスにTwitterでログインしようとすると、こんな画面が出ます。

この画面はTwitterさんが「このサイトはアンタのプロフィールをAPIを使って取ってこようとしてるんだけど、許可しちゃっていい?」って聞いてきてるところです。これを許可すると……

ツイフィールのサイトに戻りますが、自動的にアイコンやアカウント名が取得されています。つまり「APIを使えばTwitter社に関係ない人でもTwitterにある情報をもって来ることができる」わけです。

ここまでは一例ですが、話を戻します。

  • Twitter社は「ウチにある情報はAPIで取得できるようにしといてあるから、使いたければ自由に持ってってな~」と言っているわけです。
  • そして、Twitter社はツイートを自由に使用できる権利を持っているのは、前の項で示した通りです。

まとめれば、Twitterにツイートを投稿した時点で、APIを使用するあらゆるサイトに情報が流れて行っても一切文句は言えないということになります。Twitterを利用した時点でその利用規約には同意していることになるのですから。

もちろん、buhitterも正しい方法でAPIを使用してツイートを取得しているサービスです。つまり、

buhitterに自分の絵を使われたくないなら絵をツイートするな
(もしくは取得できなくなるように、鍵アカウントにすればいい)

というのが結論です。

APIの利用にはユーザーの許可が必要ではないのか

まあ以上の内容で終わりっちゃ終わりなのですが、気づいてしまう方がいるかもしれないので補足です。

上の「ツイフィール」の例では、APIをサイト側が使おうとしたときにTwitterが「アンタの情報渡しちゃっていい?」って聞いてきましたよね。しかし、俺はbuhitterにそんな許可した覚えはねぇぞ!やっぱ無断転載じゃねぇか!という解釈もあるかもしれません。実はこの主張にも誤解がある、というのを以下に補足しておきます。

Twitterを利用してログインするという操作は、本人しか知りえなかったり、変更できない情報をやり取りするためにあります。

上のツイフィールの例では、「Twitterに現在ログインしているのは誰か」という本人しか知りえない情報を調べるために連携許可の画面を出しています。他にも、サービスによってはTwitterのプロフィールを変更できるものもあったりします。これは本人しか変更できない情報ですよね。

このように連携許可の画面というのは、自分しか知らない情報をそのサービスとやり取りしてもいいか?を許可するためにあるもので、自分以外の人間でも知っている情報については別に連携許可の画面を挟む必要はないです。もちろんそのような情報をAPIを使用して勝手に取得する行為も、Twitter社の規約を根拠として合法になります。

buhitterのようなサービスは、単に世の中に既に公開されているツイートを集めているだけなのでこれにあてはまり、問題ないわけです。

ていうかそもそも「世の中にある情報を勝手に集めるのは無断転載!」なら、例えばGoogle社はWebサイトを勝手にクロールしまくって実際画像も大量にまとめているので訴えられるべきであるということになります。そんなのは明らかにおかしいことはわかるはずです。

しかもbuhitterは、規約に沿って運営しているにもかかわらず今回の炎上に際して、取得したツイートに対する削除依頼まで受け付けるようにしており、むしろ「真摯に対応している」といえるのではないでしょうか。本来は、正当な手段でTwitterから取得した情報を削除させる権利はユーザーには存在しないことをお忘れなく。

※情報を取得する行為を止めることはできないという意味であり、情報源(今回の場合はツイート)を削除すれば、純粋にAPIのみを随時利用してツイートのまとめを生成しているのならばそのまとめからも消えるはずです。ただしWebサービス側で取得した情報をキャッシュしている場合は消えないかもしれませんが、buhitterはここがどういう仕組みになってるかわかりませんし、キャッシュに関する是非に関しても法的にどうなのかは私には判断しかねます。すみません。

無断転載に当たる場合とは?

では逆に、「ツイートの無断転載に当たる」場合はどういうときなのか。

それは「Twitter社が認めた手続きによらずにコピーした」場合などです。もっとも単純な例だと、ツイートの画像をダウンロードして集めて、それをただ自分のブログに並べて貼り付けてまとめる、とかだと完全に無断転載になります。

逆に言えば、上記のようにTwitter上で「ツイートをサイトに埋め込む」を使用した場合だと、これはTwitter側が提供している機能になるのでセーフ。

基本的に「Twitter社が提供している機能によって『引用する』なら無断で行っても問題はない」ということになります。

これはおそらく、Twitter社のコントロール下にある操作ならばTwitter社の責任の下で行わせてもいいと判断されている、ということなのでしょう。例えば上記のツイート埋め込みにしたって、ユーザーやTwitterがツイートやアカウントを削除すればこの埋め込まれたツイートも表示されなくなるのですから、単純な転載とは訳が違います。実際に文章だけ転載していたら、転載元が何かの都合で削除されても転載先には残り続けることになるので、そのことの責任は転載した者にあります。

もちろん、1つのツイートを使って1つのブログ記事を作るような場合だと、それはある種の二次創作のようなケースとなるので許可は必要になるでしょうが(もちろん、モラル的にも)。

参考:ツイートの二次利用はどこまでOK? 知っておきたい「利用規約」の読み解き方 (2018/08/03閲覧)

追記:buhitterが不正なサイト扱いされた件

8月3日夕方ごろから、buhitterにアクセスしようとしてもサーバー自体が見つからなくなっていました。

公式によると、どうやらドメインの不正利用疑いで利用停止されたとのことです。

詐欺等に使われている悪質なサイトがあった場合に、通報することでそのドメインの利用を停止できる仕組みがあるのですが、それが誤った形で適用されてしまったということです。

重要なのがタイミングで、3日夕方といえばこの記事も存在していましたし、他にも同様に当該サイトが悪質なものではないと説明する記事やツイートなどは多くありました。実際にGoogleで「buhitter」を検索すれば、すぐにそういったものは見つかります。

すなわち、このドメインを通報した人はろくに調べもせずに自分の正義・固定観念だけで通報を行った(もしくは故意にということも考えられますが……)ということになり、非常に残念です。

幸いにも6日には何らかの進展があるとのことですが、もしもこれが毎日大きな利益を生むサイトで、それを誤解で停止させてしまったとなれば、損害賠償を請求されてもおかしくないはずです。行動には責任を持ってほしいものです。

また公式さんのツイートは、心労も大きいはずなのに常に丁寧な言葉で書かれており好感が持てます。今後も陰ながら応援していきたいと思います。

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